一代

一世一代やも知れず。

この大勝負、その行方やいかに。

晴れでも雨でもない、青白磁色の空。寄り道をしたけれど、まだ時計の針は12時。
時間は充分ある。はずだった。
 
一枚の札で食べられない高価なラーメンが増えた昨今、硬貨一枚でお釣りがくる黄金色の一杯は希少。なのに筆舌に尽くし難いほど、旨い。引けを取らない焼飯とセットでも、食後にショッポが買える。
新聞が無造作に置かれる赤いカウンターは、詰めて7人ってとこ。紅生姜と辛子高菜が目の前に並ぶ。
その席しかない店内は昭和色だ。麺党じゃない僕でも、色めき立つ味と佇まい。
今日も「よし!いっちょ、いっとくか」の、はずだった。
 
いろんな意味で、刻が止まってしまったのだ。
そこに在ることは決して、当たり前ではなかったのだ。
現役最後の御家芸を嗜むことが叶わず、真っ白になったが、本物を紡いでゆきたい一人として、しかと胸に刻んでおこう。何代続いたのか?一代きりだったのか?もう知る由も無いが、この一生涯、色褪せることはない。みんなもきっと言うだろう「あの頃な」って。
 
 
 
ラーメン 一代