天下御免の、カムバック。

3代目お手元退屈男ってのは、俺のことよ。

時に20世紀末、筑後の街中を賑わせた頑固者。
俺の手による蒲鉾は皆に愛され、
毎夜毎晩、〆の吸い物に至るまで、出番が無いなんてことを知らなかった。
それもそのはず、この道一筋、半世紀。体感温度と魚の状態に、鋭い勘が働く。
納得のいかねぇ落第物は、決して売らねぇ。
なまじ囃される添加物とやらも、こちとら御免のシロモノよ。
しかし、最近は退屈よのう。なんせ、つくっとらんのだから。ガハハ。
退屈まぎれに罷り越せばこの始末。めっきり本物が見当たらん。
ええい、この眉間の傷みたいな半月蒲鉾が目に入らぬかぁ!
俺流青眼崩しで、盛り付けてやるってなもんだい。
130年の老舗が未来永劫へと続くための大復古を祝って、その名も青海波。
正解はどれだか知らねぇが、また吉を切り開きゃぁ、愛でてぇことには間違いねぇ。